無人島のツリーテラス

 敷地は瀬戸内海に浮かぶ無人島である。そこに海水浴客が過ごせる空間を低コストで作ることになった。電気やガス、水道もなく、大きな重機を持ち込むことも難しい。最初に考えたのは、自分が無人島に流れ着いたら、どこにどんな居場所を作るだろうか、という事だった。それが最少の労力とコストで安心感のある場所を作ることにつながる。すると蚊や獣がいる密林ではなく、海に近いけれども高潮や海風、暑い日差しに悩まされることのない場所に目がいった。それは浜辺に群生するニセアカシアの木立の中だった。そういえばロビンソン・クルーソーが最初に住処にしたのも木の上であった。

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 材料は身近なところからと、まずは島の浜辺を周り、よく乾燥している流木を集めることにした。漂流の過程で樹皮がはがれているから、腐食や虫害の心配もない。太い丸太は見つからなかったが、沢山の流木を浜辺に干して、小屋組みや壁、手すりの材とした。

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 ニセアカシアの木に登ってみると、海沿いの砂地のせいか揺れが大きかったので、建築は構造的に自立させることにした。4メートル程度であれば木製電信柱を船で引っ張ってきて人力で起こすことができるから、森で木を伐採するよりも機械の手を借りずに建て方ができる。樹木の根が入り組んだ場所を避けて穴を掘り、基礎はコンクリート打設による土壌のアルカリ化を避けるため、プレキャストコンクリートを砂地に埋め込み、鋼管をあらかじめ溶接したプレートをアンカー止めして、直径150ミリのカラマツの電信柱を差し込んだ。そしてそこに梁を渡し、樹木の枝葉を縫って登るように、4つのテラスを浮かべた。

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 テラス全体で水平力に抗するように、建物の中心に向かって筋交いが降りる構成とし、テラスの下を自由に使えるようにした。日差しを避けるためのテント屋根の小屋組は流木で構成。同じく流木の手すりと、使い古しの鉄筋による手すり子が相まって、枝葉と溶け合った空間が生まれた。工事はこれで完成したが、しばらくして夏の日差しが想像以上に厳しいことから、アキニレの木を外周部に移植。木々の中に紛れながら、樹木をよりどころにした最小限の架構である。この建築はマルク・アントワーヌ・ロージェの「始原の小屋」にも似た、根源的な姿で浜辺に建っている

Completion
2016
Principle use
Restaurant
Site area
3,800㎡
Total floor area
13㎡
Structure
Timber
Constructor
SETOUCHI HOLDINGS
Building site
1344-2 Oobiraki Urasakicho Onomichishi, Hiroshima