星野リゾート 界 ポロト

ポロト湖を擁する白老は、アイヌ民族の集落があった地域である。対岸にはアイヌ民族博物館の野外展示の一つであるコタン(集落)が広がり、樽前山が遠望できる。この景観を活かしながら、アイヌ文化を反映した温泉旅館の姿を求めた。

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アイヌ民族は冬に凍ることのないメㇺ (湧水)を生活用水として大切にしてきた。ポロト湖はわずか数キロメートル先のメㇺが源流であり、本敷地駐車場側にもメㇺがあった。そこでこれに川筋を引きつつ湖を敷地内に引き込み、ポロト湖流域の縮景としてのランドスケープを整備した。駐車場側からのアプローチは、かつてアイヌ民族がメㇺのある場所から川沿いを下って湖に出た経路を模している。

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客室棟1階エントランス。室内に配置された白樺は集落の森を再現している。中央のコンクリート打放壁は、白樺丸太を型枠として打ち込み、コンクリートに白樺模様を転写させている。 photo

客室棟1階エントランス。室内に配置された白樺は集落の森を再現している。中央のコンクリート打放壁は、白樺丸太を型枠として打ち込み、コンクリートに白樺模様を転写させている。

川を跨いで架けた客室棟の河口側は親水エリアとして、 カヌーの船着場や不凍の水面を眺める囲炉裏のサンクンラウンジとした。

客室棟1階ロビーから北を見る。湖を眺めながら火を囲う、宿泊客の交流の場としている。 photo

客室棟1階ロビーから北を見る。湖を眺めながら火を囲う、宿泊客の交流の場としている。

アイヌ民族の家の中心にあった囲炉裏(アペオイ)をロビーに配している。 photo

アイヌ民族の家の中心にあった囲炉裏(アペオイ)をロビーに配している。

客室は、チセ(家)の中心にある囲炉裏で語り合うアイヌ民族の家族観を継承し、囲炉裏型の間接照明を仕込んだローテーブルを囲うように滞在スペースを配した。 壁紙やクッション、アートなど、色々な使い方で客室内にアイヌ模様をとりいれることで、文様に彩られたゴザや衣服が飾られるアイヌ民族の生活を感じられるようにした。

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文様を纏っていたアイヌ民族の暮らしを感じられるように、衣服に織り込まれる文様をクッションに刺繍している。 photo

文様を纏っていたアイヌ民族の暮らしを感じられるように、衣服に織り込まれる文様をクッションに刺繍している。

ローテーブルの内部に仕込んだ照明の光が、薄くスライスした天然石を透過して淡く発光する。 photo

ローテーブルの内部に仕込んだ照明の光が、薄くスライスした天然石を透過して淡く発光する。

アイヌ文様研究の第一人者である刺繍家の津田命子氏がこのためにデザインした文様を反復可能なパターンに変換して寝室の背面の壁紙にプリントして用いている。 photo

アイヌ文様研究の第一人者である刺繍家の津田命子氏がこのためにデザインした文様を反復可能なパターンに変換して寝室の背面の壁紙にプリントして用いている。

樹皮を裂いた糸で織るアットゥシをモチーフにし、ねじり合わせる途中の糸を壁にかけたアートを制作した。 photo

樹皮を裂いた糸で織るアットゥシをモチーフにし、ねじり合わせる途中の糸を壁にかけたアートを制作した。

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湯小屋は、アイヌ民族が熊追いや鮭待ちの時に山中でビバークするためのクチャ(仮小屋)をモチーフとして、美しい自然を壊さずにそっと居させてもらうような佇まいとした。クチャの構造は「ケトゥンニ」と呼ばれ、三本の丸太を立てかけ合わせて側面で繋ぐ。丸太先端が三本突き出た逆三角錐状の頂部が特徴で、焚火の煙抜きや明りとりになっている。この特性を利用することで、 窓の少ない温泉施設が、穏やかで均一な自然光のシャワーと上昇気流による湿暖気の自然換気を可能とする、エコロジカルな建築となった。頂部から煙を吐く三角錐状の仮小屋が並ぶ姿は、客室から見て湖の水平線を覆うことのない、借景の一部である。

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町と漁協の許可を得て土地を堀削し敷地内に湖を引き込むことで、湖に囲まれる温泉棟を実現。 photo

町と漁協の許可を得て土地を堀削し敷地内に湖を引き込むことで、湖に囲まれる温泉棟を実現。

三角錐の建物群のボリューム は景観に配慮し、温泉がでる場所の周辺を最小限に囲むような佇まいとした。 photo

三角錐の建物群のボリューム は景観に配慮し、温泉がでる場所の周辺を最小限に囲むような佇まいとした。

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温泉棟△湯の湯上り処。温泉棟はアイヌ建築を継承し、道産材のトドマツの丸太を三角組みした「ケトゥンニ」 を基本構造とした「カシ(野営小屋)」を再解釈した。 photo

温泉棟△湯の湯上り処。温泉棟はアイヌ建築を継承し、道産材のトドマツの丸太を三角組みした「ケトゥンニ」 を基本構造とした「カシ(野営小屋)」を再解釈した。

△湯。北西に湯上り処を見る。奥には「ケトゥンニ」をモチーフにしたフロアライトがある。 photo

△湯。北西に湯上り処を見る。奥には「ケトゥンニ」をモチーフにしたフロアライトがある。

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ポロト湖から温泉棟と客室棟を見る。 photo

ポロト湖から温泉棟と客室棟を見る。

△湯。浴場には内風呂と露天風呂を備え、頂部のトップライトは自然換気としても機能している。 photo

△湯。浴場には内風呂と露天風呂を備え、頂部のトップライトは自然換気としても機能している。

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湯小屋とは別に設けた、○湯と呼ばれる地域の人々のための共同浴場からは、ビューが取れなかったため、地底から湯が湧き出る洞窟的な空間とした。天窓はガラスが入っていないため、暖気を自然排気しながらも、雨や雪が舞い降りる。 モール泉と呼ばれる植物由来の有機物を含んだ黒いお湯の温泉が、天窓からの光を湯面にくっきり映し、光源の元を探して思わず目線を上げるふるまいを促す。

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更地だった開発地は、白樺を中心として地域の植生に基づき植林した。白樺は荒廃した大地で真っ先に発芽して根付き、他の植物を保護しながら森を回復するマザーツリーである。そこで外装や館内にも白樺間伐材の森林を設け、この開発地だけでなく、アイヌ文化を守り育てる存在としてのメッセージを込めた。 アイヌ民族がかつて森や川と深い関係を持っていたことを想い、その関係回復を願うリゾートである。

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食事処の間仕切りは節の多い杉板の節を抜くことで、朝は窓からの日光、夜はブース内からの光が節穴を通して星のように漏れ出す空間とした。 photo

食事処の間仕切りは節の多い杉板の節を抜くことで、朝は窓からの日光、夜はブース内からの光が節穴を通して星のように漏れ出す空間とした。

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Completion
2021.10
Principal use
Accommodation
Structure
RC+S+T
Site area
9,339㎡
Total floor area
4,951㎡
Building site
1-1018-94 Wakakusa, Shiraoi, Hokkaido
Construction
MAEDA CORPORATION
Structure design
Yamada Noriaki Structural Design Office Co.,Ltd, MAEDA CORPORATION
Facility design
HALS Architectural and Environmental Design Ltd.
Team
Taisuke Ishibashi [former staff], Sadaharu Aoto, Takumi Shido, Kohei Taniguchi [former staff], Eizaburo Suzuki