山野草のコクピット

 軽井沢の山林に建つ別荘である。南傾斜の敷地は水はけが良く穏やかな日差しが降り注いでいて、落葉樹の林床には可憐な山野草が咲いていた。そこでこの環境を壊さないように敷地造成を最小限にして、斜面をそっと持ち上げたような屋根とした。屋上には、在宅で仕事をすることが多い施主のために、四方がガラス張りで土の中からコックピットのように顔を出すことのできる書斎を設けた。

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 普段歩いている時は小さくて気づくことのできない山野草たち。小さな命を見下ろすのではなく、同じ目線で対話することのできる観察小屋である。一日の陽光の移ろいが山野草を通して、やわらかな光となって降り注ぐ。春の芽吹き、新緑、開花、紅葉、落葉などの四季折々の変化がガラスの上を映ろい、時間が流れていく。

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 水脈を切断しないように掘削を抑えたことで内部には高低差が生まれたが、これを活かして重力換気を取り入れたプランとしている。夏期はダイニングルームの引き戸を戸袋にしまうことで、階段室を通じて風が北側に昇っていく計画とし、階段室の窓下には心地よい風を感じながら読書のできるベンチスペースを設けた。

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 暖炉のあるリビングを南側の一番低いゾーンに設けたので、冬期の夜半に就寝するときは暖炉の火を消して一番高い位置に設けた障子戸を一時的に開けることで、暖気を寝室に移動させることが可能である。

 外壁は周辺にある石や木材で構成。あえて表現を抑制したのは、小さな山野草たちを引き立てる存在でありたいと考えたからである。別荘のゆるい空気感を作り出すような漆喰と木の壁、浅間石の土間、オリジナルのドアノブや階段手すり。もともと敷地に生えていた栗の木と楢の木を伐採後に乾燥させて、ポーチの柱や扉の把手として使用している。

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Completion
2014.9
Principal use
Villa
Structure
Timber
Site area
9,261㎡
Total floor area
129㎡
Structure design
MI+D architectural structure laboratory
Contractor
TAKEHANA KOUGYO