Nesting in forest

 日本の国土の70%を占める中山間地域のための社会圏モデルである。このエリアは高齢化、後継者不足、耕作放棄地の急増、集落の崩壊など危機的状況にある。そこで、市場開拓の視点をもち、消費者・レストラン・観光との連携を行いながら、加工・販売・流通にも関わることのできる現代的な農業経営者を育てるインキュベーション施設を提案した。広大な土地に住戸が離散した従来型の農村ではなく、集住型の巨大建築である。集合することで都会的利便性や娯楽性、交通・医療体制等を確保すると同時に、高齢化した農業従事者と若い就農希望者のコミュニケーションを促し、農業知識・技術と労働力を交換する。ITの力を借りながら、農業を知識と労働の集約型産業として再構築し、知識経済の時代の一つの先端型産業へと変換するのだ。この社会圏では、食材やエネルギー、建材の地産地消を旨としている。建材は、地場の杉や檜の柱梁を規格化して、住人が特別な技術を使わずに農閑期の合間に施工可能なものとすることにこだわった。従来のように梁同士を連結する工法は複雑な仕口や金物の仕様を招き、消耗木材の交換を難しくする。そこで、梁と桁をずらして柱をはさみこむように掛け、ボルト4本で脱着可能な納まりとした。全体の形は木材特有の腐食対策から決定した。外壁周りの腐りやすい木材の目視点検と修繕、交換を可能にするため、上階にいくにつれて外壁をセットバックする形として、各階には足場となるテラスを設けた。メンテナンスの営みが建物に持続性を与えるだけではなく、地元の雇用や森の維持・整備、経済の域内循環につながっているのだ。このシンプルなルールによって、建物は巣のような様相を呈し、山々が続くランドスケープの中に馴染んでいく。山で育てた木を伐採して川に流し、下流の材木プールで木をピックアップして乾燥・製材加工したものを組み立てる。木材のスケールに合わせて、廊下も居室も等しく3m×3mグリッドの小さな空間として、それを必要に合わせて増やしていく。木柱の隙間に包まれるような小空間の連続。シンプルな仕口で、木を一本ずつ積み上げることで全体が生まれる造り方は、動物の巣作りに近い。この建物は形態においても組成においても、ビーバーの巣に似ているかもしれない。ここには、活きいきした歓びが生まれるだろう。 この木造建築が、農業ベンチャービジネスのシンボルになり、内外に向けてその存在をアピールする。時代が求める新しいライフスタイルや共同体のイメージ・環境意識を建築が表象し、普及を促すのである。

Completion
Unbuilt
Principal use
Multicomplex
Structure
Timber
Site area
29,633㎡
Total floor area
105,484㎡
Building site
Hilly and mountainous areas