狭山の森礼拝堂

竣工より約9年後に再撮影した。樹液による美しいエイジングを感じられる。 photo

竣工より約9年後に再撮影した。樹液による美しいエイジングを感じられる。

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 狭山湖畔霊園は全ての宗教に開かれた霊園である。礼拝堂は東京都の水源涵養林に面しており、この森が滋養した水に生かされ、死後はここに還ってくるという意味で、普遍的な祈りの対象を森に見出した。そこで、敷地外周部に樹木を植えて建物を木で包み込み、木々の隙間から厳かに森に祈りを捧げる建築とした。

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 枝葉を避けるために壁の上端を内側に倒して、2本の柱を互いに立て掛け合う扠首(さす)構造を持つ合掌形式とした。その扠首構造を全方位的に展開することにより、屋根架構自体が鉛直・水平方向の荷重を負担している。そのため、通常の小屋組に必要とされる耐震壁を省略することができ、より純粋な形の合掌造りが可能となった。

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 次にこの複雑な架構を永きにわたって保護するための屋根が課題となった。曲面に追従して耐久性があり、樹液で汚れても美しいエイジングと感じられることが望ましかった。そこで、地域で盛んな鋳物産業の職人たちと、180×200ミリの大きさで、4ミリの厚板によるアルミ鋳物を開発した。この厚みは手曲げ可能な限界値であると同時に、鋳物での製作限界であるため、製造は困難を極めたが、1枚ごとに流痕が異なり、職人の思いがこもった表情となった。

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 床は祭壇側へわずか10mm傾斜しており、故人に会いに降りていく感覚や祈りの前傾姿勢を導く。粘板岩の割り肌や目地が森の奥の消失点に伸びているのは、森に意識を集中させるための配慮である。祈りを捧げる人の手の中では、指と指が合わさり、あたたかで小さな空間が生まれている。この建築は、その小さな祈りの空間をそのまま取り出したような形をしている。祭壇を後にして席に戻る時、ベンチの向こうには私たちが生きる町が遠望できる。その窓は、日常の世界に戻っていく人のための励ましとなるだろう。

Completion
2014.1
Principal use
Chapel
Structure
RC + T
Site area
148㎡
Total floor area
110㎡
Building site
2050, Kamiyamaguchi, Tokorozawa Shi, Saitama
Structure design
ARUP JAPAN
Contractor
SHIMIZU
Team
Atsushi Ikawa, Kohei Taniguchi, Eisuke Hara, Keisuke Minato
  • Building of the Year, ARCASIA Awards for Architecture 2016
  • 2016年日事連建築賞
  • Architizer A+ Awards 2016 Popular Choice Winner in Typology Categories
  • Platinum in Architectural Design / Small Architecture category in 2016, The Architecture MasterPrize
  • AR Emerging Architecture Awards 2015 highly recommended prize
  • JIA優秀建築賞