Kamikatz Public House

 徳島県の上勝町は持続的な循環型社会を目指し、ゼロウェイストを公約に掲げている。同町はゴミの45分別によって既に再資源化を8割達成しており、リサイクルセンターは店舗のように中古品が陳列されている。大量生産・大量消費社会が行き詰まりを見せている中で、この運動には国内外から多くの期待が寄せられている。

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 このプロジェクトは同町の理念に賛同し、ゴミゼロの実現には生産から販売過程でのパラダイムシフトが不可欠であると考えた民間企業が、日用雑貨や食品、ビールなどの量り売りのお店と、ビールの醸造所とパブが一体化したブルーパブを構想したことから始まった。パブの語源がpublic houseであるように、我々はこの地域の理念やごみに関する人々の知恵、ふるまいを建築として形にし、人々が自らの行為を誇りに思えるような「公共的な家」を目指すことにした。

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 まずは生産と消費の連続性を作るべく、リニアな建築に原材料倉庫から醸造を経てパブでビールが飲まれるまでの時系列順で機能を配置して、道路から見えるプランとした。

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 町から見上げた時に地域のシンボルとなるよう、パブは高さ8mの吹き抜けとし、ファサードは廃屋となった民家からの建具の両面貼りとした。かつて町に明かりを灯した窓が集合して、過疎化にあえぐ町を照らす希望の行灯となるよう願いを込めた。この吹き抜けによって、夏季は上部に滞留する暖気を効率的に換気する。二層の建具の間には空気層を閉じ込め、断熱を強化。森から出る木の枝を有効活用したカーボンニュートラルな輻射式暖炉からの暖気を天井扇によって循環させている。

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 商品の展示什器は、リサイクルセンターで見つけた箪笥や農機具などを転用、再構成した。外壁には天然由来の柿渋塗装を施した町内産の杉板の端材、床にはタイル工場の廃棄処分品、空瓶で作ったシャンデリアや町内産の鹿の角のdraft tower、新聞の壁紙なども廃材を組み合わせたもので、即興と発見に満ちた空間である。

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 この建築はリユース・リデュース・リサイクルによる省エネルギー・省資源・有害物質排出抑制だけでなく、経済の域内循環や観光促進に繋がり始めている。町のビジョンを暮らしの中で具現化したことにより、パブに集う町の人々は、この行為そのものが楽しくクリエイティブなものだと実感し始めている。また、町もこれに刺激を受け、リサイクルセンターには建材の陳列棚が新たに設けられた。我々はこの取り組みが評価され、上勝町のゼロ・ウェイストセンター(2020年竣工予定)の新規プロジェクトに携わることになった。

Completion
2015.5
Principal use
Micro brewery
Structure
Timber
Total floor area
141㎡
Building site
237-2 Hirama, Masaki Kamikatsu Cho,Katsuura Gun, Tokushima
Structure design
Yamada Noriaki Structural Design Office
Contractor
Daiso
Produce
TRANSIT GENERAL OFFICE
Furniture Design
Wrap
Team
Kohsuke Horie, Kohei Omori, Hidenori Sakai
  • WAN Sustainable Buildings Award 2016 Winner
  • 日本商環境設計家協会 JCDデザイン賞2016 銀賞
  • Architizer A+Awards 2017, Finalist in Architecture +Sustainability