Lotus Beauty Salon

 名古屋近郊に建つビューティーサロンである。サロンは一般的に鏡と椅子がリニアに連続することが多く、プライバシーがない。そこで、客をプライベートにもてなすことのできる個室だけで構成した空間を提案した。個室は狭くても奥行きを感じさせない円形とし、髪をカットする際の、客の頭を中心にしたスタイリストの回転半径を基準にして大きさを決定した。しかし普通に部屋を壁で仕切るだけではサービスの連携が悪くなる上に、閉塞感が生まれてしまう。

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 そこで個室の壁の高さを1.4 メートルに設定し、座っている客にとっては道を行き交う車が見えず空だけが見える個室、立っているスタイリストには視線の抜けがよいワンルームとした。次に建築コストを下げるため、傾斜地に合わせて通路や滞在性の低い部屋の床を傾けることで、建物の高さを抑えた。その結果、床から間仕切り壁の高さが段階的に変化し、その天板はベンチ、デスク、ハイカウンター、パーティションとグラデーション状に機能が変わることになった。

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 使用者は自らの身体のスケールに応じて、能動的にその機能や意味を発見していくことになる。壁と床の接線はモルタルで滑らかにつなぎ、奥行きが把握しづらく閉塞感のない空間とした。これは髪の毛が壁と床の接合部に挟まらず、掃除しやすいメリットもある。手で握ることができるほどの繊細な60φの鉄骨柱を用いた構造とし、一部は水平力を受けるために傾けることで、耐震壁のない大きなワンルームを実現した。  

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 円形の個室にはそれぞれ異なる薄い色ををグラデーション状に塗り、滑らかにつないだ。白いペンキに赤や黄色を数滴垂らすだけの、かろうじて知覚可能な淡い色である。色を数滴加えるだけで大きく色みが変わってしまうため、現場で何度も調色し、ようやく色を決めた。実際に空間にしばらくいると、視覚の慣れによって色味が意識から後退して、壁の色が純白に見えてくる。そして隣の空間へ移動すると、色味が意識の中に立ち現れる。その直前の体験によって、色は相対的に変化するのだ。

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 それは実際の色の変化によるものなのか、自分の体調や気分のせいなのか、日光の入り方の差なのか、即座に判断できないくらい繊細な現象である。相対的な色、使用者の身体によって変化する相対的な機能。アリの巣を半分に割ったような空間の中で、動物的で能動的な体験が展開する。

Completion
2006.01
Principal use
Hair salon
Structure
S + RC
Site area
764㎡
Total floor area
626㎡
Building site
6-905, Hoshikawa, Kuwana Shi, Mie
Structure design
Oak Structural Design Office
Contractor
Kanoh Koumuten
Steel work
Takahashi Industry
Textile coordinate
Yoko Ando
  • 2006年 日本商環境設計家協会 JCDデザイン賞 大賞